患者様から寄せられる相談の中からいくつかピックアップしました。あなたもこんな悩み、経験ありませんか。
1.虫歯菌の話
虫歯の原因がばい菌であることはほとんどの方がご存知だと思います。
その菌の名前はストレプトコッカス・ミユータンス菌といいます。
このばい菌はお砂糖が大好きで、それを取り込むと「デキストラン」という糊の様なものを作り出し、その中で増えてゆきます。ちょうど納豆のようにねばねばになって歯にこびりついてくるのです。そこにでんぷんや糖類が入ってくると今度は乳酸という酸を出し、その状態が持続すると少しずつ歯を溶かしはじめるのです。しかもその「ねばねば」は砂糖やでんぶんの無い時には菌の非常食にもなり、歯を溶かすエネルギー源になります。虫歯を作るために生まれてきたような虫歯マシーンなのです。
ではどうしたら防げるのでしょうか。
そもそも砂糖が無ければ納豆状にはならないので、歯を溶かす以前に歯磨きで簡単にとり除く事ができるのです。砂糖で歯を溶かすばい菌は他にもいろいろあるのですが、「ミユータンス菌」が「虫歯菌」と呼ばれるのはその「ねばねば」によって歯にこびりつく能力が他の菌より高いからなのです。
2.虫歯はうつるの?
「虫歯菌」と呼ばれるミユータンス菌はどこからやってくるのでしょうか?
答えは「お母さんの口から」です。
離乳食を食べはじめる頃、生後6ケ月から1才頃に歯も生えてきます。この頃お母さんからうつってくるのです。(母子垂直感染といいます)他の細菌も同時に入って来ますが、お母さんの口にミユータンス菌が多いとそれだけ高い比率のミユータンス菌が入ってきます。
(最近ではミユータンス菌より先に他の菌を定着させられれば、とワクチンの研究もされています)
ミュータンス菌は心臓に内膜炎という病気を引き起こす事は医学の世界では有名な事実です。
その点からも虫歯は感染症である、と考えられてきています。
いくら治療を受けて虫歯を治しても「虫歯病」はお砂糖をコントロールするか歯磨を徹底的にしてミュータンス菌を減らさなければ治らないので、また虫歯は再発してしまうのです。
3.歯磨き糊にだまされないように
歯磨き糊を使用するのは一般的と考えられやすいのですが歯医者自身は歯磨き糊を使っていない人が意外に多いのです。患者さんにも使わないように指導している先生が多いようです。
どうしてなのでしょうか?
それはこういう理由からです。
歯磨き糊の使用を主張する研究者や企業のデータによると確かに効果は上がるようですが、その差は効率にして20%~40%くらいというのが平均なところです。つまリ、15分の歯磨きが12分に減らせると言うことになります。
はたして歯磨き糊を使って12分間歯磨きができるでしょうか?
きっと3分も使っていたら口中がヒリヒリしてきてしまうでしょう。
もしも、歯磨き糊でできる限度と考えられる3分間程度しか歯磨きをしないのであれば2~4割は効果的なのですから使った方が良いとも言えます。
つまり目標を高い所に置くのであれば歯磨き糊は使わない方が良いが、低い所に置くのであれば使った方が良い、と言うことです。
皆さん、歯磨き糊によるサッパリ感とコマーシャルにはだまされないように注意しましょう。
当医院では研磨剤の配合が少ないタイプの歯磨き糊を少量使用する事をお薦めしています。
4.親知らずの話
「親知らず」とはどんな歯なのでしょうか?
第三大臼歯の「親知らず」は20才前後に生えてきます。
ちょうど親の知り得ない頃にはえてくるので親知らずと言うのです。上下左右で計4本あります。ちなみに、英語では知恵の出てくる頃にはえてくる、という意味で「wise tooth」(智歯)と言います。
もしも「親知らず」が出てきたらどうしたら良いでしょうか。まず、人によっで本数も生え方も違うものですから、自分の「親知らず」がどう生えてきたか知ることです。「親知らずだから」という理由で抜く必要はまったくありません。
まっすぐ生えてきて、しかも、上下がちやんと噛んでいたら、大事に歯磨きをして守ってあげてください。抜いてしまうのはもったいないです。横向きだったり半分しか生えて来なかったりしたら、前の大事な歯を護るためにも抜いてもらった方が懸命です。実際に2本とも共倒れになってしまう方か多いのです。もしも、まっすぐ生えているが、噛む相手の歯が無い場合、どんどん延びてきて相手の顎に傷を作ったり、噛み合わせを悪くして「顎関節症」と言う難しい病気を引き起こす事がありますので、抜くか噛み合わせの調整をしてもらった方が良いでしょう。
当医院では、秋田大学附属病院歯科口腔外科より、口腔外科学会認定医の先生にいらして頂いて診療にあたっておりますので、専門的な外科処置なども当医院で対応できます。